小泉元総理の勉強会

島田晴雄先生が主催している島田塾の朝食勉強会に久しぶりに参加。
ホテルニューオータニの会場は100名を超える参加者です。
今日のゲストスピーカーは小泉元総理です。
ウィットに富んだ迫力ある講演。
政権が民主党でも自民党でも、いずれも信頼感に乏しい。
それは「責任感」に欠落しているから。
今や政府は頼れない。頼るべきは自分自身・・・。
話を聞いていて思ったのは、リーダー不在のこの国の問題。
自らが正しいと信じることを確信を持って語り、多くの人を動かし、実現に導く。
他人の意見に惑わされずに、自らの信念を貫けるリーダーが、この国には必要なのです。


ディー・ブレイン証券、第13回定時株主総会

激変のIPO環境との厳しい戦い

ディー・ブレイン証券の13回目の定時株主総会を開催。
2007年3月期をピークに業績は急下降です。
2007年に年間188社あった新規上場企業は前期は19社に激減。
当時の当社は新興市場の上場引受主幹事業務を年間7社務め、60社の上場コンサルティング先から安定的なコンサルティングフィーを得ていました。
特に福岡証券取引所Q-Board札幌証券取引所アンビシャスは合わせて20社の上場会社のうち、当社が12社の引受主幹事を務め、圧倒的なシェア。
小規模企業の早期上場を支援するのが強みだったのです。
株式公開を通じて成長できる会社の基盤を早期につくること。
「価値ある事業の成長支援のインフラ構築」を事業理念に掲げる当社にとって、上場は成長支援の重要な手段なのです。
そして、上場まで時間がかかる会社はグリーンシートに誘導する。
このグリーンシートは当社の独壇場です。
新規上場とそれを補うグリーンシートのビジネスモデルは、これまでにない新たな中小企業向け投資銀行としてのビジネスモデルを構築できたように思っていました。
しかし、そのモデルは、内部統制報告制度の導入等による上場コストの増加と、相次ぐ新興市場上場会社の不祥事に伴うIPOの激減で脆くも崩壊の危機にあります。
この2年間、当社の新規上場引受件数はゼロ。
88社まで伸びたグリーンシート銘柄も64社にまで減少しました。
前々期に2億円を超える赤字を計上した当社。
前期はコスト削減で1億円の赤字まで軽減できたものの、売上の減少傾向は続いています。


GS-CAB国際株式公開に未来を託す

そこで、当社の将来の将来展望は、GS-CAB国際株式公開を利用する海外進出支援に賭けたいところです。
成長志向企業の多くが上場志向企業だったかつての日本。
上場をしたいという企業を集めれば、成長する会社に出会えたのです。
ところが、今や上場をしたいと思う成長志向企業が著しく減少してしまったのです。
そこで、成長志向企業の多くが関心をもっていると考えられる、アジア・中国への進出と資本業務提携にフォーカスをするわけです。
国内のあらゆる産業が成熟して、売上が頭打ちとなる中、成長志向企業の多くは、高い成長力のアジア・中国に目を向けています。
官民のアジア・中国進出支援する動きも活発になっているところ。
当社の専門分野は株式公開支援と開示支援。
これを生かして行いうるのがグリーンシートに公開して英文開示や中国語開示を行うGS-CAB国際株式公開です。
上場会社でも英文開示または英文IRを行っている企業は全体の5分の1ほどと未成熟です。
これは日本の証券市場の国際化を遅らせている一因でもあると思われます。
GS−CAB国際株式公開を広げることで、日本の企業の世界への情報発信力を高めるとともに、いまだに鎖国を続けているかに見える日本企業の開国を進め、世界をリードする日本を再び取り戻すことができるかもしれません。

とは言いながらも、足元では純財産がいよいよ5億円を下回った当社です。停止している元引受業務を再開するためには、資本増強も必要です。
資本参加いただける新たなパートナーを求めて、何とか厳しい環境を乗り越えたいと思います。

海外進出支援セミナー第2弾

海外進出支援セミナーの第2弾を開催。
会場は満席です。
前回と同様、中澤顧問と私の講演。
続いて、今回は第2部でパネルディスカションを用意。
アメニティの山戸専務、名学館の佐藤社長、マイコロジーテクノの津野社長、そしてWINPROの原社長にパネリストとして登壇いただきました。
アメニティ、名学館及びマイコロジーテクノはGS公開企業です。

アメニティとWINPROは既に海外に拠点を保有
一方、名学館とマイコロジーは今後の展開を検討中です。
アメニティは昨日からCAB登録で英文開示を開始。名学館は3月決算で会社内容説明書を開示後に英文開示の予定です。

韓国に一昨年に進出し、次に市場拡大が見込める中国を狙うアメニティ。
そして少子化で国内マーケットが成熟し成長が見込めない塾業界で海外に活路を見出そうとする名学館。
代理店を海外にも求めるマイコロジーに、中国で生産工場を持ち全世界に販売を広げたいWINPRO。
それぞれ海外進出への思いとCABへの期待等をお話しいただきました。

会場の反応も上々です。
GS-CABの国際株式公開により、まずはコミュニティ型募集で国内資本調達。
公開後、半年〜1年をかけて海外の有力パートナーを募り、海外進出を成功させる成長シナリオに挑戦いただきたく思います。


NHK「龍馬伝」と海外進出支援セミナー

初めての企画ですが、海外進出支援セミナーを開催。
メールでご案内しただけですが、関心は高く会場は満員の熱気です。

インターネット鎖国の日本

NHK大河ドラマ龍馬伝」が高視聴率です。
この時代、日本は鎖国
海に囲まれてどこでも船で行き来ができるはずが、鎖国で情報も入ってこない。日本の情報も世界に伝わりません。
海をインターネットに置き換えると、実は、今も日本は鎖国ではないかと思えるのです。

インターネットは世界中どこからでも、どこの国の情報も見ることができる・・・と思いきや、実は日本の情報だけは見えないのです。
日本のWEBサイトは「日本語」が基本だからです。
日本企業で英語のWEBサイトを構築している企業は一握り。
幸か不幸か日本は1億3千万人の人口を抱え、世界第2位の経済大国。
国内に十分なマーケットがある日本では、日本語サイトを作っていれば良かったのです。

国内マーケットが小さい韓国企業は、WEBサイトはまず英語でつくり、ついでにハングルでつくると言います。実はこれが当たり前。
この10年間、世界でインターネットが普及して英語がインターネットが公用語となる中で、日本だけは日本語サイトという独自のインターネットの世界をつくってきてしまったわけです。

これはインターネットだけの話ではありません。
日本の証券取引所に上場している会社4000社のうち、英文ディスクロージャーを行っているのは、たった200社。
主に海外の機関投資家が投資を行っている国際優良銘柄と呼ばれる会社だけなのです。
これでは、香港やシンガポールの市場との国際競争に勝てるわけはなく、英文開示を当たり前のように行う、中国や韓国の市場にも負けてしまう可能性が高いのです。

国際公開企業が成長のキーワード

そこで、今回のテーマはGSーCABによる国際株式公開。
GS=グリーンシートで株式公開し、CABに英文開示。
国際公開企業として資本調達をするとともに、海外の有力企業に対して日本の公開企業として主導権をもって戦略的提携を進め、成長著しいアジア・中国に積極的に進出していただきたく思うのです。

日本の証券取引所へのIPOが激減する中で、成長意欲のある会社は上場を志向しなくなっています。投機的個人投資家に支えられてきた日本の新興市場。海外の機関投資家だけでなく国内の機関投資家も関心を持たない新興市場は、その存在意義が急速に失われているかのようです。

その中で、重要なのは、どの市場に公開するかではなく、株式公開をすることにより、どのように企業を成長させていくかにあります。
成長志向の企業にとってその成長にプラスとなる株式公開が必要なのです。
海外から見れば、東証一部かマザーズかJASDAQかグリーンシートかの区別は全く意味がありません。マザーズヘラクレスなどという市場は海外では知名度は極めて低くグリーンシートも変りません。
重要なのは日本の公式なPublic Company か Private Companyかの区別であることと、英文開示。
東証一部上場企業でも英文開示していなければ見えないのですから、CABで英文開示する公開企業の方が海外では評価が高まるのは間違いないでしょう。

アジア・中国の成長市場に視野を広げる

あらゆる産業分野で市場が成熟し、成長に限界がある日本の国内市場。
今や成長志向の会社は、成長する世界市場に目を向けているはずです。
特にアジア・中国は、日本がこれまでに歩んできた50年の成長を、これから遂げる市場です。

未開拓のこの市場には中小企業にもチャンスがあります。
日本では市場の勢力図が固まって動きようのない業界も、ベトナムインドネシアでは業界の成長とともに、これからNO1の地位を築くことができる可能性があるのです。
その第一歩として、国際公開企業となることが、海外進出を優位に進めることにプラスとなることは自明の理でありましょう。

中小企業の海外進出をディー・ブレイン証券が後押し

セミナーでは、基調講演として当社顧問の中澤氏がアジアを中心とする世界の経済情勢を講演。
ノムラヨーロッパ会長を長年務め、その後、国際証券・三菱証券の社長、国際投信の会長、事業創造大学院大学の学長を経て、昨年より当社顧問に就任いただいた中澤氏は、海外に太いパイプを持ちます。
当社もこのパイプを生かして、海外現地の政府機関や金融機関と関係強化を図っているところです。

中国・韓国が力をつけ、日本の中小企業の買収を仕掛けてきている今日、当社の役割は日本企業のアドバイザーとして、主導権をもって海外進出を後押しすることにあります。

時代が求める中小企業の「開国」

開国と攘夷で揺れた坂本龍馬の時代。
海外に目を開かなかった攘夷派は破れ、明治維新の開国で、脆弱な日本が世界と対等に戦える日本を築いていきました。それができたのは、日本には潜在的な力があったからに他なりません。

日本の大手企業の製品を支えてきた日本の中小企業には、強い技術力と開発力があります。
そして50年の日本経済の成長において、国内に育った様々なサービスのもつビジネスモデルは、それそのものがこれから成長するアジアに輸出できるものです。

海外進出は大企業に任されてきた日本。
中小企業は大企業と付き合っていれば、海外に進出しなくても間接的に海外と取引ができたのです。
しかし、今やその大企業中心の日本経済の国際競争力は、かつての1位から27位まで低下。
大企業が取引先を海外に求める中で、中小企業自らが、自立して海外に進出すべき時代になったのです。
今こそ、中小企業が海外で成長できるチャンスです。
その第一歩を踏み出すかどうかに、会社の成長の可能性がかかっています。

国際公開企業となって2年後。
相変わらず国内のみを見ている競合企業と比べれば、海外において大きな差をつけていることは間違いないでしょう。

経済産業省にエンジェル税制拡充の提言書を提出

経済産業省を訪問。
新規産業室と産業資金課から6名の方が丁寧に対応いただきました。
私からは以下の要望書を提出。
趣旨はエンジェル税制の拡充です。
設立3年未満とされている、総所得から控除できるエンジェル投資の要件について、証券会社が投資勧誘を行う場合に限り緩和するといいう案。
目的は世界的に技術力ある中小企業へのエクイティ資金の供給拡大で、日本の成長力を高めること。
未公開株詐欺事件の急増もあることから、情報開示が徹底されて証券会社が審査を行っていることを条件として、エンジェル税制を拡充すれば、透明性の高い中小企業投資を広げることができるはずです。

新規産業室のご意見としては、エンジェル税制の当初目的を考えると、年数制限を撤廃するのは困難で、新しい中小企業投資促進税制を考えた方が良いのでは・・・とのこと。
要望書の方向は、政策課題と合致しているので、何かアイデアを出してみたいとのことでした。

中小企業に対するエクイティファイナンスによる資金供給の円滑化について

経済産業政策局 御中

平成22年4月12日
ディー・ブレイン証券株式会社

公認会計士 出 縄 良 人

1 中小企業の資金調達環境の現状

 わが国中小企業の資金調達は地域金融機関からの借入金への依存度が高い。米国の中小企業と比較しても純資産比率が低いのが特徴と言われ、ROEは高いが脆弱な財務基盤で倒産しやすい傾向にある。上場会社がエクイティファイナンスを活用して自己資本を増強しているのに対して、中小企業においては、一部の上場準備企業を除き、エクイティファイナンスを行っていないのが実情である。
 一方、地域金融機関については、優良企業に貸し出しを集中する傾向があり、本来、資金が必要な企業に資金供給が十分に行われない。昨年施行された中小企業金融円滑化法によって、返済猶予によって返済負担が軽減され一時的に資金の余裕ができた中小企業においても、返済猶予期間終了後の返済によって資金繰りが一気に悪化することも想定される。

2 エクイティファイナンスの分類

 中小企業の行うエクイティファイナンスについては、横軸に私募型と公募型、縦軸に事業投資型*1と金融投資型をとる4象限に分類できる。一般に未公開企業として行う私募のうち、縁故増資または事業提携先等への割当は資本的投資。VCからの投資は創業期のベンチャー企業に投資を行う長期育成型投資の一部を除き、上場等による売却益を目的とすることから投機的投資に分類される。
わが国の金融商品取引所への新規上場時に行われる公募増資、特に1999年以降拡大した新興市場の新規上場においては、圧倒的多数の投資参加者が初値売却による超短期利得を目的とした投機的投資である。一方、グリーンシート制度*2を利用して証券会社が行う募集では、資本的投資を集めることを目的とした公募が多く行われている。また、譲渡制限付店頭取扱有価証券制度*3を利用した証券会社募集においても、同様に資本的投資を募集した事例*4が発生している。

3 コミュニティ型募集による資本的投資の勧誘

 従来、証券会社が行ってきた株式の投資勧誘は、主に投機的投資を目的とする金融商品投資に関心をもつ顧客を対象としてきた。しかしながら一般には株式投資に関心を持つマーケットと特定の発行会社またはその事業に関心をもつマーケットでは重なるところが少ない。
特定の発行会社またはその事業に関心をもつマーケットは、発行会社の周辺に形成されている。具体的には発行会社の顧客、取引先、提携先、役員従業員及びその家族や知人友人等であり、ここではこれを「発行会社コミュニティ」と呼ぶこととする。これに対して株式投資に関心を持つマーケットは証券会社の顧客となっていることから「証券会社コミュニティ」と呼ぶこととする。
証券会社コミュニティにおいては、発行会社の事業そのものよりも投資から得られるリターンとリスクに関心を持って金融商品選択を行う傾向にある。上場会社4,000社をはじめとする多くの金融商品が存在するわが国において、一般に新興市場に新規上場する中小企業の発行する株式の金融商品としての魅力は、東証一部上場企業と比較すると相対的に低い。そこで新興市場の新規上場においては、公募価格を低めに設定することにより短期売却に伴う利益を得やすくし、投機的な投資対象としての魅力を高めることにより資金を集めてきた。その結果、新興市場の上場会社においては、投機的個人投資家の持株比率が高まる傾向にあり、それが短期的な株価上昇を求める圧力となって、長期的視点にて行うべき経営の足かせとなっているとの指摘もある。
発行会社コミュニティにおいては、発行会社への関心のもち方は様々であるが、投資から得られるリターンは目的ではなく結果であるとの理解により投資をするケースも少なくない。グリーンシート銘柄として募集を行っている事例としては、FC加盟店180店が平均50万円を出資して9千万円の調達を行った学習塾*5、顧客ユーザー約100名が出資して1億4千万円を調達した外国製バイク専門店チェーン*6、地元商工会議所の経営者仲間と取引先経営者が参加して1億3千万円を調達した精密金属加工のメーカー*7など、個々の発行会社コミュニティを対象とした募集が行われている。現在グリーンシート銘柄としての株式公開を準備しているフィットネスクラブでは、3万人の会員顧客を対象とした株式募集を計画している。
尤もこのような発行会社コミュニティを対象とした株主づくりは上場会社においても行われている。主に株主優待制度を利用して鉄道会社が沿線の顧客を対象に株主を集めている事例や遊園地を経営する会社が固定客を獲得する手段としている事例等がある。ただし、流通市場における株主作りが一般であって、発行市場における募集対象としているケースは少ないと考えられる。
企業経営者にとっては必ずしも投機的投資家を株主として求めるわけではなく、むしろ長期に渡り安定的に企業経営を支援いただく株主が望ましいと考える傾向にある。経営者の観点からは、証券会社コミュニティを対象の株式募集よりも発行会社コミュニティを対象の募集が好まれる傾向が強い。コミュニティ型募集においては、会社は株主たる発行会社コミュニティの皆の共同事業であるとの意識を経営者が持つことが基本である。
経営者が株主から経営を委任されて、株主のために経営するのはどちらのコミュニティを対象とする募集も同じであるが、証券会社コミュニティの株主の目的が一般には株主の金銭的な利益にあるのに対して、発行会社コミュニティの株主の目的は会社の事業目的そのものであることが多い。経営者は株主の金銭的利益のために働くべきか、事業目的たる顧客の喜びのために働くべきかとの問いに対しては、後者と答える人が多いと考えられ、株主の目的と事業目的が一致する発行会社コミュニティ対象の募集は、社会が求める理想の株主と経営の関係に近いと思われる。

4 コミュニティ型募集に証券会社が介在する社会的意義

不動産取引においては、宅地建物取引主任あるいは不動産鑑定士等の専門家が取引に介在することによって取引の透明性・健全性が保たれている。一方、株式の取引においては、上場株式以外においては、不透明な取引が行われることも少なくない。特に最近は未公開株詐欺事件が多発しており、透明な取引環境を整備することは極めて重要と考える。
1997年の未公開株式の投資勧誘解禁の趣旨は、金融機関の貸し渋りを背景に、未公開企業に対する資金供給を証券会社が担えるようにすることにあった。証券会社に未公開株式の投資勧誘を禁止しているのは情報開示が行われていないことにその理由があったことから、上場会社に準じた情報開示を行う未公開株式について投資勧誘を認めたものである。今日、経済情勢が厳しさを増す中で、中小企業の資金調達環境はさらに悪化している。日本の大手企業の下請け構造にあり、その技術を支えてきた中小企業は多く、日本経済が世界に向けて成長力を持つ鍵は中小企業が握っていると思われる。これらの中小企業の多くは未上場会社である。これら未上場の中小企業に幅広くエクイティ資金を供給できる可能性を持つのが発行会社コミュニティを対象とした募集と考えられる。しかしながら未上場株式の募集取引において透明性が低い状態では健全な発展が見込めない。透明性を高めるのが公認会計士監査制度等により客観性を高めた情報開示であり、取引の健全性と安全性を高めるのが専門家としてこれに介在する証券会社の存在である。
既存の制度として、上場会社に準じた情報開示を条件に証券会社に投資勧誘が認められている未上場株式は、グリーンシート銘柄、フェニックス銘柄*8及び譲渡制限付店頭取扱有価証券の3種類である。このうち上場廃止銘柄が対象となるフェニックス銘柄を除く、グリーンシート銘柄と譲渡制限付店頭取扱有価証券の二つの制度については、今後、発行会社コミュニティを対象とする募集が積極的に推進されることにより、日本の未来を担う中小企業にエクイティ資金が円滑に供給できる環境が整備されるべきと期待する。

5 コミュニティ型募集の発展のハードルと対処策

現在、グリーンシート銘柄は64銘柄に留まり、譲渡制限付店頭取扱有価証券制度を利用したコミュニティ型募集は1銘柄に留まる。これらの制度が発展する上での現状のハードルは以下の通りである。

日本証券業協会の制度上の課題

日本証券業協会(以下「協会」という。)の規則はそもそも、主として金融商品投資を目的とする個人投資家を保護することを目的として用意されており、コミュニティ型募集の形態に証券会社が介在するケースを想定していない。日本証券業協会としては制度の悪用を想定して、1年未満の創業期の企業のグリーンシート銘柄指定を認めない運用を行う等、規制を強化する傾向にある。
今後、日本の成長力を取り戻すために、中小企業に健全なエクイティファイナンスを広げ、その役割を証券会社が担えるような制度づくりをしていただくことを望みたい。

②エンジェル税制等の税制上の課題

 エンジェル税制については設立3年以内の会社を対象として、一定の条件により投資額を総所得から控除できる優遇措置Aのほか、グリーンシート銘柄のうちエマージング区分には優遇措置Bが利用できるようになっている。
 しかしながら、優遇措置Bは株式譲渡益との通算を認めるのみであって、上記コミュニティ型募集に参加する投資者が、株式売買を積極的に行う投資家ではないことが一般であることから、効果が低い。また、世界的な技術力が評価される日本の中小企業の多くは設立3年以上であることから優遇措置Aは利用できないケースが多い。
 一方、エンジェル税制のむやみな拡大は、税収確保の観点から慎重であるべきことは当然であり、未公開株詐欺への悪用も懸念されるところである。
 そこで、優遇措置Aについて、証券会社が投資勧誘を行う未上場株式(グリーンシート銘柄及び譲渡制限付店頭取扱有価証券)に限定する歯止めをかけながら、設立3年以内の条件を緩和し、広く中小企業に広げることを要望する。この方策によって長年大手企業の下請けに甘んじてきた技術力ある中小企業等にエクイティファイナンスの機会を広げ、自立して積極的に海外に進出する等の成長を後押ししたい。

エクイティファイナンスに関する啓蒙・教育

 これまでの証券投資教育は主として、流通市場を中心とする株式売買取引に関する教育が中心であったが、株式会社の仕組み、株式と経営の関係、株主になることの意義、その権利と責任等について、広く学校教育及び社会人教育の場において学ぶ機会を提供し、健全な資本主義経済の発展に資することが重要と考える。

以上

*1:ここでは、売却等により金銭的な利益を得ることを目的とする株式投資を「金融投資型」、株主として事業に協力あるいは支援もしくは共同で事業を行うことを目的とした投資を「事業投資型」と定義する。

*2:日本証券業協会が「グリーンシート銘柄及びフェニックス銘柄に関する規則」に定める制度。上場会社に準じた継続開示と一定の証券会社の審査を条件として、証券会社が継続的な気配提示を行うことを条件に未上場株式について投資勧誘を行うことを認めている制度。金融商品取引法においては株式が流通することを前提に「取扱有価証券」として、インサイダー取引規制等、取引所上場有価証券に準じた不公正取引規制が規定されている。

*3:日本証券業協会が「店頭有価証券に関する規則」に定める制度。投資家、発行会社及び証券会社の三社契約において、上場日の前日まで(最長2年間)継続所有を約することを条件として、未上場株式について証券会社に投資勧誘を認めている制度。発行時開示のみ上場会社に準じた開示を求めている。証券会社の審査は制度上義務づけられていない。

*4:平成21年12月〜平成22年3月にかけて行われている株式会社Long Tail Live Stationの募集をディー・ブレイン証券が取扱っている事例では、同社が同制度による募集取扱に関する審査規程を内規で定めた上で審査を行い、有価証券届出書を開示して募集を行っている

*5:株式会社名学館(証券コード2455)

*6:株式会社ダッツ(証券コード3336)

*7:株式会社マルマエ(証券コード6264)グリーンシート銘柄指定後に東証マザーズに上場。

*8:日本証券業協会が「グリーンシート銘柄及びフェニックス銘柄に関する規則」に定める制度。上場廃止企業について一定の条件を満たすことで証券会社に投資勧誘を認めている。

元ソニー会長、出井さんのクオンタムリープで講演

出井さんが経営されているクオンタムリープが主催している「鯉のぼりの会」で講演。
日本から世界に羽ばたくベンチャー企業・中小企業を支援することが目的の会です。
高い志を持つ企業経営者のみが参加できるこの会は毎回、出井さんも参加。
出井さんは昨日ワシントンから戻ったばかりとのこと。
お忙しいようです。

今日の私の講演テーマは「企業の成長につながる資本政策と資金調達の実践」。
コミュニティ型資金調達の実例を紹介し、資本政策の基本について解説。
オーナー経営者のシェアを維持することが資本政策の目的ではなく、会社の発展に資する株主構成をつくることが重要です。
(本日のレジュメ:http://www.d-brain.co.jp/www/pdf/pdf/1266882360.pdf

講演の後、活発な質問です。
コミュニティ型資金調達には、出井さんにも共感をいただき、参加者の皆さんも高い関心のようです。
証券会社コミュニティで金融商品としての株を売るのではなく、発行会社コミュニティで事業に参画いただける株主を募る。
企業経営者にとって理想的な株主募集のあり方と思います。

元バンダイ社長、山科さんが新事業をプレゼンテーション

バンダイ社長の山科さんが新たに取り組むLong Tail Live Station(LTLS)社のプレゼンテーションに参加。
会場の秋葉原のUDXシアターはほぼ満席です。
今日のプレゼンテーションは取引先等、関係者向け。
ディー・ブレイン証券にてLTLSの株式募集を取扱っていて、私も招待です。
昨日はこれに先立って報道機関向け説明会も行われています。http://www.asahi.com/digital/cnet/CNT201001250098.html
http://www.phileweb.com/news/d-av/201001/25/25186.html

日本の映像文化をデジタル化して世界に配信

壇上では山科社長がにこやかな笑顔でTLSの事業内容の説明をスタート。
その事業とは、日本のもつ文化的価値の高い貴重なアナログ映像を高度デジタル化してネット配信するという極めて社会的意義の大きいもの。
すでに著名な映画・アニメ等の著作権を有するプロダクション複数社と契約を締結。
デジタル化の業務が始まっています。
デジタル化された映像のネット配信等に伴う収益を著作権者に分配する事業モデルです。
様々な動画が洪水のように氾濫するネットにおいて、著作権者の協力を得て、LTLSでしか見れない価値の高い映像コンテンツを集めていくということでしょう。
また、独自の動画検索エンジン(開発中)によって動画シーンの細部までブレイクダウンした検索を可能とし、デジタル化映像データの利用ニーズに応えるとのこと。

カラーデジタル化で蘇る名作

プレゼンテーションも終盤。
「それでは実際に見てもらいましょう・・・」と山科社長の声が響きます。
会場が暗くなったかと思うと、往年の名優の侍姿の映像が映し出されました。
某監督の名作の1シーンです。
思わず見入ってしまいますが、3分ほどで終了。
続いて、画面が4つに割れて、同じシーンが4つの画面で同時に上映されます。
驚いたのは、右下の画面のカラー映像。
左上で流れる元の白黒アナログ映像と比較すると、精細なカラー映像にデジタル化。
コマ落ち部分も修復され、自然な色づかいで、とてもつくられたものとは思えません。
この4画面は、デジタル化の加工が進んでいく様子を段階的に示したものとの山科社長の説明。
左下の画面は色づけ前の白黒デジタルです。
圧巻のデモンストレーションでした。

一般向けにも説明会を開催

今日と同様のプレゼンテーションが一般向けに2月4日と5日の午後5時から、同じ秋葉原のUDXシアターで開催の予定。前座では私が「コミュニティ型投資の魅力」のテーマで講演です。入場無料。
https://www.d-brain.co.jp/form/fm/dbs_ltls

LTLSの株主になって山科社長を応援

このLTLSの株式はディー・ブレイン証券にて、日本証券業協会の「譲渡制限付店頭取扱有価証券」制度によって募集取扱を行っている銘柄です。
グリーンシート制度とは異なり、流通市場は形成されませんが、新株発行後2年間または証券取引所への上場日の前日まで継続保有することを、投資者と発行会社と証券会社が3者契約をすることを前提に、未上場株式の取扱を証券会社に認めている制度です。
発行時の情報開示はグリーンシートと同様に義務づけられており、銘柄審査と継続開示については、ディー・ブレイン証券が内規で義務づけています。

経営者にとっては流通市場で株式を売買する投資家よりも株主として会社を応援する長期保有の株主を増やしたいところ。
そのような企業の株式募集は「コミュニティ型募集」が最適。
ここには多くのLTLSファンが集うコミュニティができてきています。
「コミュニティ型募集」を証券会社が支援するには、グリーンシートとともに譲渡制限付店頭取扱有価証券制度は最適です。
DB証券としても「譲渡制限付募集取扱」を積極化していきたいと思います。