有終の株主総会

ついに株主総会のその日が来ました。
会場の東京証券会館では社員がいそいそと準備をしています。
役員控室には、山科さんをはじめとする新任役員候補の皆さんがお待ちです。
現役員と新役員が一堂に会したのは初めてのことです。
10時5分前。総会の会場に入室。
すでに株主の皆さんが集まっています。

いつもの総会では、議決権数のご報告から開始ですが、今日の総会は最初に、私からご挨拶です。
30年ぶりに証券免許を取得した証券会社として1997年に生まれたディー・ブレイン証券。未公開株の投資勧誘制度を活用して中小企業にエクイティファインナンスを広げることが目的です。
当時はVIMEX(ヴァイメックス)と呼んでいた現在のグリーンシート
設立時の記者会見で私が語ったのは、この仕組みを使って年間50社の企業の資金調達を支援するとの目標でした。
しかし、その目標には遠く及ばず、初年度にVIMEXに登録した企業は5社のみ。
2年目はゼロという状況に。
しかし、その後、新興市場ブームで上場前に投資ができるVIMEXが注目され、企業数が増え始めます。
ネットバブル崩壊を乗り越えて、最盛期には年間27社がグリーンシートに株式を公開しました。
当社も上場主幹事業務に進出し、札証アンビシャスと福証Q-Boardの主幹事で過半数を制する躍進を果たしたのです。
しかし、その後のIPOの激減は当社の経営を直撃し、業績も悪化。
今回、山科さんのお力を借りて、経営を再構築していただくべく、私はけじめとして辞任することを決意した旨、心をこめてお話しました。

そして株主総会
議案は定款変更、取締役選任、監査役選任の3つ。
定款変更の内容は社名の変更です。
ディー・ブレイン証券からみどり証券へ。
「みどり」グリーンシートを守り育てることを方針とすることの証。
これに山科さんの新たな事業戦略を加えて、当社を再生するのです。
取締役は私と小峰さんが退任し、新たに3名を選任。
監査役は全員辞任して、新たに3名を選任。

私からの議案説明に続き、質疑応答です。
流石に今日は、待ってましたとばかりに手が挙がります。
97年から株主というお一人は、期待していたのに残念・・・と。
今後について新社長の弁も聞きたいということでしたが、まだ代表に選任されていないことから、この場では難しいところです。

別の株主からは、今振り返ってみて反省すべき点は何かのご質問。
反省すべき点は言い尽くせないほどあります。
もっと多くの証券会社を巻き込める手だてはなかったか。
VCがグリーンシートを使って投資やEXITに使っていただけるように工夫ができなかったか。
そして最大の反省点は、グリーンシートを「市場」に近付けてしまったこと。
当初はVIMEXというディー・ブレイン証券の私設取引の場であったものを、金融庁日本証券業協会と交渉をして、どんどん制度を整備して市場に近付け、その結果、コスト負担の重い仕組みになってしまったのです。
それでいて流動性が低いことが評価につながらず、中途半端な市場になってしまった点は否めません。
グリーンシートは「市場」ではなく、未上場企業が証券会社を通じてコミュニティ型投資とVC投資を受けやすくなるインフラとして整備すべきだったのかもしれません。

過去は取り戻せませんが、未来は作れます。
グリーンシートは未来に向けて、この反省を踏まえて改善をすることができるはずなのです。
それは当事者としてはみどり証券がやりますが、私もまた客観的な立場で、意見を積極的に述べていきたいと思っています。

質疑応答の終了後に、3議案をまとめて審議。
拍手の中、全議案を承認。
新任役員もそれぞれご挨拶し、私の最後の株主総会が終了しました。

監査法人を退職して起業したのは32歳。1993年のこと。
その時に設立したのが、現ディー・ブレイン・コンサルティングの㈱ディーブレインです。
それから17年。
いつもディー・ブレインという社名と一緒でした。
私のこれまでの人生の3分の1以上を伴に歩んだディー・ブレイン。

ディー・ブレインはみどり証券として新たなチャレンジです。
そして私も、また新たな挑戦に向け準備開始です。

励ましと労りのメール

29日のディー・ブレイン証券社長の退任発表後、昨日までに200通を超えるメールをいただきました。
ほとんどが暖かい励ましのメールです。
本当にありがたく、目頭が熱くなります。
何とか、今後、皆さんの気持ちに応えたいと思います。


最後の講演

札幌証券取引所アンビシャスクラブで講演。
毎月定例で開いているランチセミナーです。
ディー・ブレイン証券社長としての最後の講演になりました。

アンビシャスクラブは、札証の新興市場「アンビシャス」の上場に関心を持つ会社を中心とする勉強会。
札証アンビシャスは、上場している10社のうちディー・ブレイン証券が6社の引受主幹事を務め、私も力を入れてきた市場です。
まずは、アンビシャスクラブの会長のキャリアバンク佐藤社長からご挨拶。
続いて、参加者の自己紹介。
今日は20名ほどの参加。
大テーブルは満席です。

私の講演は、ディー・ブレイン証券の生い立ちからお話を始めました。
社長を退任することになって、いざ創業の頃のことを思い出しつつお話しすると、万感の思いが胸に込み上げます。
気を取り直して今日のメインテーマへ。
最近の私の講演テーマの中心である「国際株式公開と海外進出」です。
アンビシャスで株式を上場し、CABで英文開示して国際株式公開。
英文開示で客観性の高い企業内容をしっかりと発信し、国際公開企業の信用力を通じて、海外の有力パートナーを見つけるわけです。

参加者からは、とても高い評価。。
積極的に海外特にアジア・中国に進出したいという企業が現れてくることを願っています。

セミナーの前には、札証の定専務を訪問。
退任のご挨拶。
新社長の石川さんをご紹介。
石川さんは70歳になりますが、10歳は若く見えます。
週末は自宅の近くで畑仕事とのことで、これが若さと元気の秘訣のようです。
日本の新興市場の課題についてもディスカション。
グリーンシート制度と同等の「銘柄指定制度」を構築することもご提案。
札証につくれば、プレ・アンビシャスとも言える制度になります。
アンビシャスクラブを核とすれば、その意義は大きいでしょう。


挨拶回り開始

今日から社長交代の挨拶まわりを開始。
新社長となる石川さんとご一緒に、まずは関東財務局にご挨拶です。
担当者はどんどん代わるので、当社のことを詳しくご存じというわけではありません。
そこで、私から事業コンセプトや会社の生い立ちを紹介。
そしてIPOの現況と問題点、当社の状況をお話しました。
良くご理解いただき、共感が得られたように思います。
これで少しでも石川さんの仕事が楽になればと思います。

午後は日本証券業協会を訪問です。
前会長と増井副会長にご挨拶。
グリーンシート新興市場の在り方などをディスカション。
何とか前向きに良い制度にしていきたいという真摯な気持ちが伝わってきました。
新興市場に専門投資家がほとんど参加しない現状について、私からVCの活用を提案。
生保・年金や投資信託の多くは、時価総額の大きな銘柄しか投資できないのに対して、数億円の時価総額でも投資ができる専門投資家がVCです。
未上場企業に投資をして上場して売却するモデルから脱却し、VCが新興市場における長期専門投資家として活躍すれば、新興市場は投資家の厚みを増し、活性化と健全化につながるはずです。
VCは投資事業有限責任組合ビークルとして投資を行うのが一般です。必要なのは組合契約を変更だけ。IPO激減で厳しい環境にあるVC業界の活力向上にもつながるかもしれません。


ディー・ブレイン証券の社長辞任を発表

本日の取締役会でディー・ブレイン証券の新社長人事を決定。
私は社長を辞任し、現・取締役業務管理部長の石川さんが社長に就任します。
来月25日に開催する臨時株主総会終結をもって社長交代です。
私はディー・ブレイン証券の取締役も辞任するほか、子会社のディー・ブレイン・コンサルティング代表取締役と取締役も辞任します。

夢は20万社にエクイティファイナンスを広げること

思えば、多くの方の期待を背負ってディー・ブレイン証券を設立したのは13年前、1997年7月のことでした。中小企業にエクイティファイナンスのインフラを広げたいとの一心で、グリーンシートと地方新興市場を活用する株式公開に全力を傾けて参りました。夢は全国の中小企業の10%にあたる20万社に株式発行による資金調達を広げること。中小企業が借入金依存体質から脱却して純資産比率を高め成長するための体力をつけることで日本経済を力強く再生させたいと思ったのです。
1,500名を超える株主の皆様に支えられ、これまでに当社は累計で150社を超えるグリーンシート企業の株式公開を主幹事としてリードして参りました。グリーンシートから証券取引所に上場した会社は、経営統合によるものも含めて14社を数え、当社自身も上場引受主幹事業務に参入。夢は実現できるかに見えました。

新たな経営体制で厳しい冬を乗り越える

しかし、2006年に188社あった新規上場会社数は2009年には19社に激減。当社の業績も急速に悪化しました。IPOマーケットはまさに真冬とも言うべき環境です。この冬を乗り越え、やがて春が来たときに再び芽を出し花を咲かせるためには、既存顧客に対するサービスレベルを維持しつつ、コストは最低限のレベルまで引き下げ、体力を温存するしかありません。長く厳しい冬にはなりましたが、春が来ない冬はありません。
その一方、資本力を増強し、新たな収益源を見出す努力も必要です。そのために、お力を貸していただくことになったのが、元バンダイ社長の山科さんです。山科さんが代表を務める山科ファンドに当社の第三者割当増資を引き受けていただき、山科ファンドが当社の筆頭株主となりました。これを機に、私自身はけじめとして当社代表を辞任し、新たな経営体制の下でディー・ブレイン証券の再起を図っていただくべきと決断しました。
新社長に就任する石川さんは当社で長年、役員及び管理部門の責任者を務めていて、ディー・ブレイン証券のあらゆる業務に精通しています。山科さんを含めて山科ファンドからご推薦いただいている取締役を加えて、新経営陣は万全の体制で、新生ディー・ブレイン証券を成長に導いていただけるものと信じています。

新社名は「みどり証券」

また、ディー・ブレイン証券は社名も一新し、みどり証券と改めます。
私としても、取締役の立場はなくなるものの、引き続き株主として側面からサポートし、みどり証券の成長のために労を惜しまない覚悟です。
私の在任期間中、多くの皆さんから叱咤激励をいただき、本当にありがたく思っています。
是非、生まれ変わるみどり証券に、ご指導を賜りたく、心よりお願い申し上げます。


山科ファンドが筆頭株主に!

本日、ディー・ブレイン証券の取締役会で元バンダイ社長の山科さんが代表を務める山科ファンドの当社への資本参加を決定しました。
山科さんとは、動画配信事業のLTLS(Long Tail Live Station)の募集取扱を当社が行ったのが出会いです。
グリーンシートとコミュニティ型募集の理念に強く共感いただき、何とかディー・ブレイン証券を再生して、この制度を広げたいと、本当に有難いお申し出です。
そして本日、ついに取締役会で決定し、公表できるところにこぎつけたのです。
本日決定したのは、山科ファンドが増資引受と第三者よりの譲受けによって、当社のシェアの約12%を保有して、筆頭株主になること。
株主が1,500を超えている当社。
現在の筆頭株主は5%強を保有する日本証券代行ですから、山科ファンドが断トツの筆頭株主になります。
役員も山科さんから推薦いただいて経営体制も補強します。
これで何としても、厳しい環境を乗り越えて参りたいと思います。

証券取引所のグリーンシート?

証券取引所トップとディスカション

証券取引所のトップのYさんと面談。
今日のテーマは、グリーンシート制度と同等の制度が取引所でできないかの議論。
日本証券業協会グリーンシート制度を店頭市場に近い立派な仕組み育ててくれたものの、予算が少なくプロモーションができないのが課題。
コミュニティ型募集が中心のグリーンシートには投機的投資家が参加しません。
そのために流動性が低く、市場としては社会的評価が高まらない要因となり、取扱証券会社も増えないということも課題です。
ただ、発行会社にとれば会社や事業そのものに投資をする長期安定株主が増えるのはメリットです。
そこで、グリーンシートの課題を克服しつつ、そのメリットが生きるような制度を証券取引所につくることはできないかというテーマでディスカションしました。

日本証券業協会グリーンシート制度とは

日本証券業協会では、原則として証券会社に未上場株式の投資勧誘を禁止しています。
その例外となっているのがグリーンシート
上場会社に準じたディスクロージャー要件を満たし、一定の基準による証券会社の審査を経た会社について、証券会社の申請に基づいて日本証券業協会グリーンシート銘柄として指定します。グリーンシート銘柄については、上場してなくても証券会社が投資勧誘することができるという仕組みです。
銘柄指定後、証券会社には気配(株価)の提示が義務付けられており、取引の参考となる情報を提供します。
取引の結果は証券会社が日本証券業協会に報告して、日々公表されるといった仕組みです。

金融商品取引所にグリーンシート制度をつくる意義

この制度を応用すると、証券取引所グリーンシートに準じた新たな「銘柄指定制度」を創設し、証券取引所が銘柄指定した銘柄について、日本証券業協会の規則で証券会社に投資勧誘を認めるといった制度設計が考えられます。
証券取引所にとって新銘柄指定制度は、有力な上場候補が集まる場となります。そして何より社会的に重要なのは、新銘柄指定制度を経由する上場が新興市場の新規上場の品質を高め、このところ相次いだ不祥事による新興市場の評価向上につながると思われることです。
新銘柄指定制度においては、上場に準じたディスクロージャーを義務づけ、証券会社が審査と指導を行います。この制度を利用する会社にとっては上場企業となるための実践的な訓練の場とも言えます。証券取引所としてもこの間に上場企業としての管理体制ができているかどうかを十分に把握できることができるのです。
Yさんからは社内で検討してみたいとのお返事。
楽しみにお待ちしたいと思います。
いつも積極的に新たな挑戦を続け、着実に成果を上げているYさんには、本当に敬服します。

このテーマにおける課題の一つは金融行政の観点からの制度の整理でしょう。
金融商品取引所における「市場」ではない「銘柄指定制度」をどう位置付けるかということです。
新興市場のあり方が問われる今日、そのひとつの解決策になるか金融庁ともディスカションをしたいと思います。