証券経済学会 at 彦根

滋賀大学で開かれた証券経済学会に出席。
彦根駅を降りてバスで5分。
石垣に囲まれた緑豊かな彦根城を眺めつつ、白鳥が舞い降りるお堀の隣が大学です。
素晴らしい環境。

日本のFPの実態

午前の分科会は、まず日本証券業協会の元常務理事で、岡山大学の坂下先生の発表に参加。
日本のFPの特性についての分析でした。
米国と異なり独立型のFPは少なく、金融機関の営業活動に肩書きをつけるためのFPが多いのが実態とのこと。
個人の高齢化も進む中で、「顧客の資産を守る」ことを目的とした、かかりつけの医者のようなイメージの、総合的金融アドバイスができるFPが求められるところです。

ドイツIPOの研究

続いて慶應義塾大学商学部の三田村先生の報告
ドイツのIPOにおけるアンダープライシングの分析。
何とドイツでは銀行が引受業務を行っています。
メインバンク化の営業活動で引受主幹事業務をとって、上場後に貸出も増やしているようです。
投資銀行と商業銀行が融合した、米国で言えばグラスティーガル法以前の形。
銀行にはファイヤーウォールとモラルが求められるところですが、米国の金融危機でこの流れは世界的に加速するかもしれません。
私からIPOに参加する投資家構造について質問。
ドイツの新興市場ノイヤーマルクトは不祥事続出で消滅・・・。というよりも既存市場に統合され、上場基準は引継がれているとのこと。
ITバブル時には個人投資家が増えたものの、統合後は機関投資家型になったといいます。

彦根城は絶景

お昼休みには、15分ほど歩いて彦根城を観光。
井伊直弼が城主だった彦根城天守閣は国宝です。
梯子の様な急な階段を最上階まで登ると、眼前に琵琶湖が大きく広がります。
雄大な景色です。

市場型間接金融に関する論戦

午後は大教室で、4人が発表。テーマは市場型間接金融。
米国金融危機で、市場型金融のあり方が問われるところです。
市場型間接金融の概念はかなり幅があります。
みずほ証券の高田さんは、預金金融機関による従来型融資を除くあらゆる金融仲介機能を市場型間接金融と定義。
日本においては、市場型間接金融への脱却が不十分なままであることを指摘。
良く研究されていますが、市場型間接金融へ日本が移行する方向性については、答えが明確ではありませんでした。
続いて日本総合研究所の新美先生が地方証券会社のビジネスモデルを検証。
少々実態とは離れた内容に思えました。
同志社大学法学部の川口先生は市場型金融システムにおける法規制について。
金商法を中心とする法規制で比較的一般的な内容。

日本では資金はやはり銀行に集まる!

最後は立命館大学の大垣先生の発表。
個人の資金が、銀行から大きく脱却して、新たな金融仲介機能を有する市場型金融に流れるとは思えないと指摘。
とすると、銀行依存の構造は変わらない。
その中で、地方金融機関の融資機能が低下し、国債等の安全資産への資金が流れてしまう。
問題は地方金融機関の情報力やリスク分析力の不足にある。
そこで、産業に対して円滑な資金供給を行うためには、地方金融機関の金融機能を仲介する専門投資銀行が必要と主張。
大変、興味深い報告です。
その一端は民営化された政策投資銀行が担うかもしれません。

後半は質問を集めて4人が回答。そのご自由討論。
私からも、専門投資銀行を担える能力のある人材が十分にいるかについて質問。
日本の金融の専門人材は捨てたものではないとの先生の回答でした。

学問と実務が融合して何かが生まれる!

懇親会で夕食。1年間、特別招聘教授を務めてお世話になった明治大学の坂本先生。
そのご紹介で熊本経済学園大学の坂本学長。
国士舘大学の白銀先生、埼玉大学の相沢先生、立命館大学の松村先生など。
また、元証券経済研究所理事長の関要さん、日本投資者保護基金の理事長の高橋さんとも親しくお話しさせていただきました。
高橋さんは協会の副会長時代、グリーンシートを大変、応援していただいていて、かつて大蔵省でご一緒にグリーンシートのプレゼンテーションをした間柄です。

考えさせられ、勉強になった有意義な学会の1日でした。