レバレッジ型経営からエクイティ型経営へ

住宅新聞社で講演。

建築・不動産業の経営者30名程が参加。
最も厳しい経営環境にさらされている業界です。

レバレッジの仕組み

金融危機を増幅した一因と言われているレバレッジ
この数年急成長した不動産ファンドは、典型的なレバレッジ型金融でした。
賃貸収入が年間1千万円入ってくる1億円のマンション。
これを1億円の元手で取得すれば利回り10%
しかし2千万円の元手で、残りの8千万円を年利3%の借入金で調達すればどうなるでしょう?
賃貸収入1千万円から金利240万円を差し引いて得られる利益は760万円。
2千万円の元手に対する利回りは38%に上昇します。
さらに、仮にマンション価格が1年後に3割上昇したとすると・・・。
売却益3千万円は全て元手2千万円を出した人のものなのです!
元手2千万円に対する利益の総額は3760万円で、なんと利回り188%です。

しかし、ここに落とし穴がありました。
逆にマンションの価格が3割下落したとすると・・・。
売却損3千万円で、利益どころから2千万円の元本が全て吹っ飛びます。

デット(負債)とエクイティ(資本)による構造が、レバレッジをつくります。
もし100%エクイティとしたら、レバレッジはゼロですが、金融の安定性は高まります。

企業経営もレバレッジ

これは不動産ファンドだけの話ではありません。
株式会社のバランスシートを見れば、貸方は、負債と資本で、やはりレバレッジ構造であることがわかります。
特に中小企業は資本(純資産)が薄く、レバレッジが強いのが特徴。
儲かるときにはオーナーは大きな儲けになりますが、損失を抱えると簡単に倒産しやすいということです。
経営環境が厳しくなるとき、中小企業が目指すべきはエクイティによる資金調達。
金融機関からの借入金に頼らなくても良い体力をつけなければなりません。

お金を膨らませることを目的とした「金融のための金融」の時代は終焉しました。
金融工学の使い方を誤った金融のプロフェッショナルは大いに反省し、新たな時代の金融を担うことが求められます。
金融の真の社会的役割は、私たちの生活を支える多くの「事業」に資金を供給すること。
「事業のための金融」の原点に戻るときです。

目指すはエクイティ経営

今、経営が目標とすべきはフルエクイティの無借金経営。
これまでの概念ではレバレッジがゼロで効率が悪いと批判されたものです。
しかし借入がない会社は潰れないのです。
レバレッジはゼロですが、安全性の高い経営です。

そこで重要なのはエクイティ資金の供給を円滑にする市場金融のインフラ。
中小企業に対するエクイティ資金供給のインフラの一つがグリーンシートです。
グリーンシート制度ができて10年。
ようやく社会がグリーンシートを求める時代が来たようです。]