コミュニティ型資金調達

激動の2009年も大晦日です。
金融危機政権交代
当社も「変化と対応」をテーマに掲げ、中小企業にエクイティファイナンスを広める絶好のチャンスと、自らも果敢に変化すべく挑戦した1年でした。

会社のファンを株主として募集してきたグリーンシート

資本的投資を公募で集めるグリーンシート
従来の投機的資金ではなく、会社を応援する株主を募る場です。
2009年2月にグリーンシートに株式を公開したアメニティ。
この会社は飲食店等のトイレを診断して改善する専門サービスを行うユニークな事業を展開しています。
全国にFC加盟店を広げており、グリーンシートの募集では加盟店を主な対象に募集を行いました。
全国に個別指導学習塾をFC展開する名学館も同様の募集を行っています。
本部と加盟店が対立しがちのFCシステムで、加盟店が株主となると、加盟店は本部の利益のために頑張ろうという気持ちになり、本部は株主たる加盟店を大切にします。WIN−WINの関係作りに極めて有効です。
全国に3万人の会員を抱えるフィットネスクラブのF社。
現在、グリーンシート株式公開準備中です。
グリーンシートでの募集戦略は会員を対象とした募集。
仮に会員1人に1万円の株をもっていただくと3億円の資金調達になります。
株主となった会員は「株主会員」として、株主会員割引や株主会員特別コース等の特典(株主優待)をつけます。
株主となった会員は他のフィットネスクラブには移りにくくなるとともに、利用頻度も高まります。
友達を会員に誘っていただく効果もあるでしょう。
資本戦略と事業戦略を一体化した成長戦略が描けるのです。
このような募集の特徴は、「コミュニティ型」の募集と言うことができます。
公募ですから誰でも投資参加はできますが、中小企業の株式ですから、金融商品としての魅力は4000社もある上場会社や投資信託等の商品に劣るのは当然です。
とすると、金融商品として関心をもつのではなく、その会社の株主になることそのものに関心を持つマーケットに募集をする必要があるのです。

グリーンシートはコミュニティ型IPO

そのマーケットこそ「コミュニティ」です。
どんな会社にも、大なり小なりその会社を取り囲む「コミュニティ」が必ずあります。
それは顧客、取引先、提携先、社員とその家族、経営者の友人知人、地域など様々です。
グリーンシート経由でマザーズに上場したマルマエ。
半導体製造業向けの精密部品を加工するこの会社は、鹿児島県出水市に本社があります。
1億円強を集めたグリーンシートでの募集に参加したのは、地元の商工会議所の経営者仲間と仕入先・外注先の経営者です。
さらに、BMWのオートバイ専門店を展開するダッツの場合、募集の対象としたのはBMWの愛好家です。
グリーンシート株式公開記念ツーリングを開催し、白樺湖畔に集まったライダーに株主募集の説明会。
会社の様々なタイプのファンが集う場が「コミュニティ」。
そのコミュニティに向けてIPOをするのがグリーンシートです。

いろいろな「コミュニティ型資金調達」

グリーンシートを使わなくても「コミュニティ型資金調達」は可能です。
金融商品取引法では、有価証券を50人以上に投資勧誘をする場合、1億円以上の募集をするには「有価証券届出書」の提出が義務付けられています。公認会計士の監査を2期以上受けなければならず、中小企業にはハードルが高いと言えましょう。
しかし、逆に、1億円未満の募集であれば、自由にできるというのが金融商品取引法の規定です。
財務局に2枚〜3枚程度の書式の「有価証券通知書」さえ出しておけば良いのです。
ということは、証券会社を通さずに自ら「コミュニティ」を特定して募集を行うのであれば、コミュニティ型資金調達を株式を使って行うことができるのです。
さらに、数年前に中小企業に広がりを見せた「少人数私募債」も、「コミュニティ型資金調達」の一種です。
この場合は「社債」ですので、返済(償還)が必要ですが、募集対象は取引先や経営者の知人等、「コミュニティ」なのです。
このほか、事業組合等の基金を組成して、その出資者を「コミュニティ」から募集する方法もあります。関西を地盤に賃貸住宅の管理を行っているL社では、コインパーキング事業の一部を基金(組合)として分離。この組合に賃貸住宅オーナーが出資をする形の「コミュニティ型」募集で5千万円を調達しました。
基金を利用する募集は行う場合には、業務執行組合員等には原則として金融商品取引法により第二種金融商品取引業者の登録が求められます。ただし、適格機関投資家が出資を行う場合(適格機関投資家等特例業務)や他の金融商品取引業者が募集するケースにおいては、第二種の登録は不要です。

眠っている周りの資金を生かす

コミュニティ型資金調達の社会的意義は、眠っている資金の活用にあります。金融機関に集まった預金が資金を必要とする中小企業に回りにくくなっている状況下、預けているお金を直接、企業に投資していただくことが重要です。つまり「間接金融」から「直接金融」へのシフトです。
中小企業では、目の見えない投資家から資金を引っ張ってくるのではなく、身近な「コミュニティ」のもつ預金の一部を直接投資していただくことで、新たな資金循環を起していくことが重要です。
間接金融という大動脈が動脈硬化となっていることから、「直接金融」というバイパス手術で血液を流すことが必要と言うところでしょう。

返済猶予とエクイティファイナンス

金融円滑化法で返済猶予に金融機関も対応していただきやすくなりました。
しかし、それでもいつかは返済しなければならないのが借入金です。
公認会計士ネットワークを持つ当社でも、返済猶予の申込に必要な「経営改善計画」の作成を指導する業務も増えているところですが、ここで重要なのはキャッシュフローをプラスとする事業戦略・コスト戦略とともに、返済猶予後の返済原資を生む財務戦略です。
ここに当社ではコミュニティ型募集によるエクイティファイナンスを組み合わせる提案を行っています。
資本を充実させることで、財務体質を大きく改善し、金融機関への依存度を下げる。
強い中小企業が、未来の強い日本を築いていくのです。